「やりたいことが見つからない」
そう悩んだことがある人は、きっと少なくないと思います。
周りを見れば、夢に向かって進んでいる人がいる。
好きなことを仕事にしている人がいる。
自分の目標を迷いなく語っている人もいる。
そんな姿を見ていると、自分だけが立ち止まっているように感じることがあります。
でも、本当にみんな、自分のやりたいことがはっきりと見えているのでしょうか。
表からは迷いなく歩いているように見えても、その途中で悩んだり、立ち止まったり、進む方向を変えたりしている人も多いはずです。
もしかすると私たちは、「やりたいこと」というものを、少し大切に考えすぎているのかもしれません。
大切だからこそ、決められなくなる
「自分は、本当は何がしたいんだろう」
そう考えたとき、いつの間にかその問いは大きくなっていきます。
本当に好きなのか。
自分に向いているのか。
仕事になるのか。
続けられるのか。
これを選んで後悔しないのか。
そして最後には、「自分は人生で何をしたいのか」という大きな問いにまでたどり着く。
人生に関わる大切なことだと思えば思うほど、間違えたくなくなる。
間違えたくないから、正解を探す。
正解を探すから、なかなか決められない。
さらに、一度「これをやりたい」と決めたら、ずっと続けなければならないような気もしてきます。
でも、最初からそこまで考える必要はあるのでしょうか。
「なんか気になる」から始めてもいい
やりたいことは、最初から完成した形で現れるとは限りません。
「なんか気になる」
「ちょっと面白そう」
「もう少し知ってみたい」
始まりは、それくらい小さなものかもしれません。
知らない音楽を聴いてみる。
いつもと違う道を歩いてみる。
気になっていた本を開いてみる。
興味のある仕事について、誰かに話を聞いてみる。
1ミリでも心が動いたなら、できる範囲で少しだけ触れてみる。
行動することは、「これをやりたいことにする」と決断することではありません。
自分の興味を確かめる、小さな実験くらいに考えてもいいのだと思います。
やってみて楽しかったら、もう一度やってみる。
もう少し知りたくなったら、少し深く触れてみる。
その繰り返しの中で、最初は小さかった興味が、いつの間にか「もっとやりたい」に変わっていくこともあります。
やめることも、ひとつの発見
もちろん、やってみた結果、
「思っていたのと違った」
と感じることもあります。
そんなときは、やめてもいい。
一度決めたことを続けることには、確かに価値があります。
すぐには面白さが分からず、続けた先で初めて見えるものもあるでしょう。
でも、続けることだけが正解ではありません。
やってみたからこそ、「これは自分とは少し違う」と分かることもあります。
それも、自分を知るための大切な発見です。
興味を持つ。
やってみる。
続けてみる。
違うと思ったら、やめてみる。
そして、また別のものが気になる。
やりたいことを探す道は、一直線ではなくてもいいのではないでしょうか。
誰かの「やりたいこと」に関わるとき
では、自分ではなく、身近な誰かが「やりたいことが分からない」と迷っていたら、私たちはどう関わればいいのでしょう。
経験があるほど、つい答えを伝えたくなることがあります。
「あなたには、これが向いていると思う」
「これをやってみたらいいんじゃない?」
もちろん、それが助けになることもあります。
でも、相手のやりたいことを、こちらが見つけてあげようとしすぎないことも大切なのだと思います。
なぜなら、その人の「やりたい」は、最後にはその人自身の言葉から出てくるものだからです。
「何か関心のある分野はある?」
「できる、できないは一旦置いて考えてみたら?」
「最近、純粋に楽しいと感じた瞬間はあった?」
そんな問いを投げながら、一緒に考えてみる。
そして、すぐに答えが出なくても待ってみる。
関わる側にできるのは、答えを与えることではなく、本人が自分の中にある小さな興味に気づけるような問いを渡すことなのかもしれません。
答えではなく、機会を渡す
そして、本人の中から小さな関心が見えてきたとき、周囲だからこそできることがあります。
それは、機会をつくることです。
興味のある仕事に少し携われるようにする。
学べる研修があれば参加を勧めてみる。
詳しい人と話せる場をつくる。
実際に触れられる場所へ背中を押してみる。
頭の中で考えているだけでは分からなかったことも、実際に経験することで見えてくることがあります。
「思っていた以上に楽しかった」
かもしれない。
反対に、
「やってみたら、少し違った」
かもしれない。
どちらでもいい。
機会を提供することは、その人の進む道をこちらが決めることではありません。
本人が、自分の気持ちに気づくきっかけをつくること。
そこから先を決めるのは、本人です。
だから、機会を渡したあとにも、答えを急がせないことが大切なのだと思います。
小さな興味と、小さな機会
「やりたいこと」を見つけようとすると、どうしても遠くにある大きな答えを探してしまいます。
でも本当は、もっと近くに始まりがあるのかもしれません。
「これ、なんか好きだな」
「ちょっと気になるな」
「もう一回やってみたいな」
そんな小さな心の動き。
自分自身なら、それを無視せず、小さな機会をつくってみる。
誰かの中にそれを見つけたなら、答えを決めるのではなく、その人が試せる機会をつくってみる。
そして、続けてもいい。
やめてもいい。
途中で方向を変えてもいい。
最初から人生の答えを決める必要はありません。
歩き始めたからこそ、見える景色があります。
やってみたからこそ、気づく自分があります。
そうやって小さな興味と小さな機会を重ねていった先で、ある日ふと、
「もしかしたら、これなのかもしれない」
と思えるものに出会うことがある。
「やりたいこと」は、見つけてから歩き始めるものではなく、
歩いたり、立ち止まったり、ときには戻ったりしながら、
少しずつ自分の中に輪郭が生まれていくものなのかもしれません。
だから、自分自身にも、誰かの人生にも、答えを急がなくていい。
小さく心が動いた瞬間を、大切にしてみる。
そこから何が始まるのかは、まだ誰にも分からないのだから。

